近所の老兵

昨今、高齢者の交通事故が目立つようになってきた。
ブレーキとアクセルを間違えた。高速を逆走した。そういう勘違いによるミスから生じるのが多いが、全て認知症の症状らしい。

近所のおばあちゃんと話していたら、今日ご主人と警察に出頭すると言うので、な、何があったんですか?
なんか事件でも起こしたんですか?と聞くと運転免許証を返納するのだと言う、、、。
出頭なんて言うから慌てたがな、、(笑)。

実は、昨日そのジイ様、、一人で何も告げずに自動車を運転して箱根に行ってきたのだが途中のパーキングエリアのトイレに財布を忘れてしまったらしい。どうやらここのところ認知症が出て来たらしく、自宅に帰って来て奥さん(このおばあちゃん)にこっぴどく叱られ、もう運転しちゃダメという事になった。最近認知症の疑いがありこの事件が決定打となった訳だ。

いーやっ、まだワシはまだまだやれる、いける!と意気がっていたジイ様も、奥さんに説得され自覚したのか免許証を返納する事をようやく決断した。でも、今まで普通にできていてこれからもできそうな事にピリオドを打つというのは勇気がいると思うが、他人を巻き込む事故でも起こしたら大変なことになる。今回別にアクセルとブレーキを間違えたとか事故を起こした訳でもないのだが、いつもと違う行動をとって財布をなくすという事がキッカケとなりそういう話になった。また、一緒に生活している奥さんがちょっとした変化や些細なサインに気付いて説得する人がいなければそうはならなかったと思う。
てことは、一人暮らしの高齢者となるとずっと運転する事になるなぁ、、。先日の横浜の高齢者の軽トラで小学生を跳ねた事故が妙にダブる。

そのジイ様、かつては某大企業の鬼工場長と呼ばれたヤリ手。高度経済成長期を車で走り回っていたのもついこの前、、、とおばあちゃんが呟いた。

と言っても免許証はすでにパーキングで無くした財布の中。区役所やら警察署やらあちこち巡って抹消申請となるので時間がかかる。

「老兵は去るのみね、、あー忙し忙し、、オホホホ!」と言って、最新のプリウスを器用に運転して、サザエさんに出てくるちっちゃくなったマスオさんのようにすっかり気を落としたジイ様を隣にチョコンと乗せ警察署に出かけて行った、。
いつも、安田く〜ん、、元気かね!と声をかけてくれたジイ様は私に目も合わさずじっと黙っていた。

このおばあちゃんだけは永遠に運転していそうだ、、、女は強し、、、。
自分もいつかそうなるので覚えておこう。